芥川龍之介の桜
隅田川はどんより曇つてゐた。彼は走つてゐる小蒸汽の窓から向う島の桜を眺めてゐた。花を盛つた桜は彼の目には一列の襤褸(ぼろ)のやうに憂欝だつた。 が、彼はその桜に、――江戸以来の向う島の桜にいつか彼自身を見出してゐた。 芥川龍之介 『或る阿呆の一生』 (1927年)。
『或る阿呆の一生』は、1927年の芥川自殺直後に見つかった文章で、彼の人生を書き残したものと思われています。 米騒動、シベリア出兵、そして、1923年には決定的な関東大震災が発生しました。 芥川じゃなくても、多くの人は憂鬱だったのだろうと思います。
明治大正時代が終わり、時代は昭和初期の暗黒の時代へ突入します。 芥川をヒーローとした太宰治は、もっと憂鬱になったのでしょうね。
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